失語症とは

失語症とは、目に見えない”言語障害”
全国に約50万人いるとされます。

 概要

失語症は、脳卒中や脳外傷などにより、左脳の言語領域にダメージを受けた際に起こる言語障害です。
話す・聞く・読む・書く能力が部分的または完全に失われる状態を指します。


主な原因

脳卒中(特に左脳の損傷)・脳外傷・くも膜下出血が大半を占める。日本では約50万人が失語症を抱えているとされます。日常生活への影響:言葉でのコミュニケーションが困難になるため、患者本人とその家族の生活の質に大きな影響を与えます。

失語症のタイプ

ブローカ失語(運動性失語)※MIT-J適応

損傷部位は、主に左半球前葉(ブローカ野)
・相手の話はある程度理解できる
・本人が話すときに言葉をうまく発音できず、言葉が不明瞭になりやすい。
助詞の使い方が適切でない、言葉の組み立てや単語の選択が難しいことがある。
・平板な話し方になったり、考えながら話したりすることがあり、会話がぎこちなくなる。

ウェルニッケ失語(感覚性失語) ※MIT-Jは適応外

損傷部位は、主に左側頭葉(ウェルニッケ野)
・相手の話を理解できない。
・本人は流暢に話せるが、言い間違いが多く、意味が通じない場合が多い。本人は言い間違いをしていることに気付かない。

伝導失語

損傷部位は、左頭頂葉・左側頭葉
・相手の話は理解できる。
・本人は比較的スムーズに話せる。
・すぐ気付いて自分で言葉を修正しようとする。

全失語

損傷部位は、左前頭葉と左側頭葉を含む広い部位
・相手の話の理解も、話すときの能力も著しく障害を受けている。無意識に特定の単語やフレーズを繰り返すことがある。

健忘失語 ※MIT-J適応の可能性はあるため、今後協会で研究をすすめていく

損傷部位は、左側頭葉
・相手の話は理解できる。
・本人は流暢に話せるが、特定の単語や名前が思い出せないことが多い。

失語症と混同されやすい症状との違い

失語症は、「言葉を理解したり使ったりする力」に障害が出る状態ですが、似たような症状を示す別の障害もあるため、混同されがちです。

・認知症: 物忘れや判断力の低下が中心で、言語以外の認知機能にも広く影響します
・構音障害: 発音の筋肉がうまく動かず、言葉がはっきりしない状態(言語機能自体は保たれている)
・発達障害: 幼児期からの発達に関連する言語の問題で、失語症とは原因も経過も異なります など。

このように、似ているようでも原因や対応方法が異なるため、正確な診断と医師の判断が重要です。

失語症の3つの回復過程・経過について

失語症は、時間とともに少しずつ改善することがありますが、回復のスピードや程度には個人差があります。一般的には、発症から数週間〜数ヶ月の「急性期」を経て、言語機能の回復を目指す「回復期」、その後の「慢性期」へと移行していきます。

急性期:脳損傷直後。発症からおよそ1ヶ月
回復期:本格的なリハビリ期。発症から1〜6ヶ月前後
慢性期:長期的な支援が必要とされる。発症から半年以降

特に発症後6ヶ月以内のリハビリ開始が重要です。早期に適切なリハビリを受けることで、その後の回復に良い影響を与えると言われています。ただし、6ヶ月を過ぎた後でも、あきらめずに継続することが大切です。MIT-Jは、慢性期失語症者でも、発話改善がみられた症例報告があります。詳しくは「MIT-Jとは」ページをご覧ください。

リハビリテーションの重要性と種類

失語症の改善には、日本では主に言語聴覚士(ST)によるリハビリが不可欠です。話す、聞く、読む、書くといったコミュニケーション機能を回復するリハビリをしていきます。

リハビリの方法は、失語症のタイプや個人の程度、既往歴などに応じて様々です。例えば、絵カードなどを提示しながら身近な単語を反復するトレーニング、文章の構築練習などがあります。
たくさんあるリハビリ法の中で、MIT-Jのように音楽の要素(メロディやリズム)を活かす方法も、特にブローカ失語症の方に効果的な手法のひとつです。MIT-Jが適応かどうかは、医療従事者の判断が必要となります。

なぜMIT-Jはブローカ失語症に有効なのか?

MIT-Jは、右半球にある音楽的機能である、音楽の音程とリズムとを活用して、失語症患者の「話す力」を回復する医療リハビリ技法です。ブローカ失語症の方は、言いたいことは頭に浮かんでいても、それを言葉にして発することが難しいという特徴があります。
しかし、音程やリズムに乗せることで、通常の左半球にある発話回路とは異なる右半球の音楽的機能を活性化し、左半球の言語機能を補う「迂回路」を作ることができるとされています。
MIT-Jでは、単語やフレーズにメロディーとリズムパターンを付けて”歌う”ように、繰り返し練習することで、少しずつ自然な発話へとつなげていきます。そのため、特に左半球損傷の「話す」力が大きく損なわれているブローカ失語症の方にとって、有効性が高いと報告されています。MIT-Jの詳細は、「MIT-Jとは」ページを御覧ください。

失語症・高次脳機能障害の理解を深めるために

当協会は、失語症を始めとする高次脳機能障害全般について正しい理解を深める講座を配信しています。


https://www.gene-llc.jp/rehanome/mit-j/
講座受講後に、MITアンバサダー資格を取得することが可能です。