令和4年10月29日(土)・30日(日)の2日間に渡り、共催の上智大学にて、ブローカ失語症の発話改善に有効とされる日本語版メロディック・イントネーション・セラピー(MIT-J)の実技を学ぶ研修会『第一回MITトレーナー実地研修』が開催された。
本研修会は、事前に株式会社gene「リハノメ」にてMIT-Jオンラインセミナー20講座分を受講済みの医療従事資格保有者を対象とし、「一般社団法人 日本MIT協会」関啓子会長が開発したMIT-Jを、医療現場や臨床現場にて実際に施術することができる担い手を育成する目的として行われた。
開催にあたり、関啓子会長、佐藤正之 事務局長(東京都立産業技術大学院大学 認知症・神経心理学講座 特任教授)、辰巳寛 副会長(愛知学院大学 心身科学部教授)より、挨拶があった。
「全国のブローカ失語症患者にMIT-Jを届けたい」という強い思いで日本MIT協会が設立され、研修実現に至るまでの経緯や、MIT-Jオンラインセミナー配信初日はリハノメのサーバーが一時ダウンするほどの視聴数があり、MIT-Jの需要や関心度の高さ、普及への使命感を再認したこと、参加者への期待などを語った。実際に東京での開催にも関わらず、北海道や大阪府、岡山県など遠方からの参加者もおり、スーツケース片手に来場する姿も多く見られた。
実技研修は、講師2名による実演を見ながら丁寧に行われた。参加者は2人1組で向かい合って座り、互いの手を取り合い、患者役と施術者役を交互に行っていく。言葉の抑揚(アクセント)に応じて手を上下に動かし、患者に合図を出しながら、”MIT-Jの肝”である「話すように歌う」・「歌うように話す」手法をレベルⅠからレベルⅣまで繰り返した。
例えば、最終的に「トイレにいきたい」という日常で用いるような発話を促すためには、最初は「トイレ」という言葉を「ん~ん~ん~」とハミングするところから始まる。患者から適切な応答があれば、次第にハミングから単語にメロディをつけてレベルアップしていき、「と~い~れ~」、「と~い~れ~に~い~き~た~い~」、「トイレに、いきたい」のように、段階的に語数を増やしていき、自分で言葉を発することができるように導いていく演習を行った。
初めは緊張気味に手を取り合っていた参加者らも、講師が周回し、その場で疑問点を解決していくので次第に笑顔が見られるようになり、終盤には自信に満ちた表情へと変わっていった。
1日目を終えた参加者は、「事前にオンラインセミナー動画を何度も見て自宅で練習してから臨んだが、患者役が男性だと腕を上下に振るにも予想以上に重かったり、タイミングをとるのが難しかったりと、相手ありきのMIT-Jなので、やはり実技じゃないと掴めないポイントが沢山あった。今日、まるで100本ノックのように「話すように歌う」練習が沢山できてよかった(笑)明日の実技テストに向けて家でも復習します。」と意気込んで帰宅していった。
翌2日目は、1日目の総復習をしたあと、45分間のマーク方式による科目試験、1人10分程度の実技試験が行われた。この認定試験に合格した者がMITトレーナーとなれるだけあって、休憩時間には参加者同士で練習し合う熱心な姿も見受けられた。
無事に2日間に渡る研修と認定試験を終えた参加者は、「MITの実施方法について知識としては知ってはいたが、実施方法が分からなかったので実際に講義を聞けてとても参考になった。」、「講義内容がわかりやすく、何度も実技練習ができたのでとても理解が深まった。」、「講師も多く、こんなに充実した研修なのに認定費が安すぎて心配になるくらい有意義だった。」、「今後、失語症臨床に使用していき、研究、症例発表をしたい。」などと感想を述べた。
最後に、佐藤正之事務局長は「MITトレーナーに合格したら、是非国内での様々な実施例を増やし、MIT-Jの効果を示す症例発表をして、MIT-Jの発展、広く普及に貢献してほしい」と話し、研修会は終了した。
MITトレーナーに合格者には、後日、認定証が授与されるほか、日本MIT協会ホームページにて名前が掲載される。(掲載希望者のみ。)失語症患者やその家族らからの、MIT-Jをどこで誰から施術してもらえるのかが分からないという課題を解決する目的だ。
今回、協会設立以来初めての『MITトレーナー実地研修』だったが、今後は年に1~2回、東京・名古屋・大阪のいずれかにて継続的に開催する予定だ。※
※次回は、2023年夏頃、名古屋にて開催予定。MITトレーナーになるには、まずはリハノメ「MIT-Jオンラインセミナー」のSTEP3の受講、医療従事者である証明書の提出が必須。新型コロナウイルス感染拡大状況等によって変更となる可能性があるため、詳しくは日本MIT協会HPのnewsをご確認ください。